前回、群馬県の 12 市を、地域経済循環率と買い物・投資の向き、産業の中身から 4 つに分類しました。

比較編 群馬の12市を地域経済の観点で4つに分類してみた【2022年 RESASデータ】 taplicobase.jp

その中で、当社のある群馬県桐生市の地域経済循環率は 75.9%、12 市中 11 位でした。

群馬県12市の地域経済循環率(2022年)。桐生市は75.9%で12市中11位。最も高い太田市は121.8%、最も低いみどり市は65.8%

今回はこの数字の中身——所得のどれだけが市外から入っているのか、市内で生み出しているお金はどんな中身なのか、12 年間で何が変わったのか——を、桐生だけに絞って分解していきます!

桐生にゆかりのある方は、ぜひ最後までご覧ください!

桐生市の地域経済循環率は75.9%(2022年)、所得の約24%は市外から

地域経済循環率は、次の式で計算します。

地域経済循環率 = 生産(付加価値額)÷ 分配(所得)× 100

もう少し詳細の説明は、以下の記事にまとめてるので、興味のある方はご覧ください。

定義編 地域経済循環率とは?計算式と見方——低いのは悪いことなのか taplicobase.jp

桐生市は、住民と企業の所得 4,247 億円に対して、市内で生み出した付加価値(生産)が 3,223 億円です。差額の約 1,024 億円、所得の約 24% が、市外から入っています。式に当てはめると、循環率は 3,223÷4,247=75.9% です。

桐生市のお金の流れ(2022年)。市内で生み出す付加価値3,223億円に対し住民・企業の所得は4,247億円で、約1,024億円(所得の約24%)が市外からの流入

近隣の足利市・佐野市・みどり市との比較

両毛線でつながる栃木県の足利市(83.5%)と佐野市(95.9%)を加えても、桐生より低いのは隣のみどり市だけでした。足利とは約 8 ポイントの差があります。群馬の主な市と、足利・佐野を並べたのが次の図です。

群馬の主な市と両毛線沿いの栃木2市の地域経済循環率(2022年)。太田121.8%、高崎102.4%、佐野95.9%、前橋94.0%、足利83.5%、桐生75.9%、みどり65.8%。100%が所得を自前の生産で賄える水準

桐生市の地域経済循環率と民間投資の推移(2010〜2022年)

RESAS にある 6 時点の循環率と、市内の企業などが行う投資が差し引きで市外へ出ているか(民間投資の流出入。マイナスが市外へ出ている側)を並べました。

年循環率民間投資の流出入
201076.2%−15.6%
201373.5%−12.3%
201572.5%−17.2%
201875.5%−12.9%
202075.8%−15.8%
202275.9%−7.5%

循環率は 12 年間、72〜76% の間で動いています。急に下がってはいませんが、上がってもいません。

桐生市の地域経済循環率の推移。2010年76.2%から2022年75.9%まで72〜76%の間を動いている

民間投資は、2010 年から 2022 年までの 6 時点すべてで、市外へ出ていく側です。

なぜ75.9%なのか① 生産側:第2次産業の規模と労働生産性

循環率が低い理由は、分子(生産)と分母(所得)の両側にあります。まず分子です。

桐生市の産業構成:第2次産業は付加価値の29%

桐生の生産 3,223 億円の内訳は、第 1 次産業 約 33 億円、第 2 次産業 941 億円、第 3 次産業 2,248 億円です。

桐生市の生産3,223億円の内訳。第1次33億円、第2次941億円、第3次2,248億円

「織物の町」「製造業の町」という印象に対して、第 2 次産業は付加価値の 29% で、全国の 26% は上回るものの、群馬県全体の 38% を下回ります。第 2 次産業の中で最も大きいのは電気機械で、第 2 次の 34%(約 320 億円)です。

第2次産業の労働生産性は全国1,398位

規模だけでなく、生産性も低い水準にあります。従業者 1 人当たりの付加価値は、第 2 次産業が 631 万円で全国 1,741 市区町村中 1,398 位、第 3 次産業が 778 万円で 1,052 位。循環率で県内上位の安中(2,101 万円)や太田(1,430 万円)とは 2〜3 倍以上の開きがあり、同じ織都の足利(795 万円)にも及びません。

2010 年基準の内閣府の分析も、桐生を「製造業の比重が高い一方、第 2 次産業の労働生産性は製造業のウェイトの高さと比較して高いとは言えない」と整理していました。12 年たっても、この構造は変わっていないようです……。

なぜ75.9%なのか② 所得側:市外から入る約1,024億円の内訳

次に分母です。市外から入ってくる約 1,024 億円の中身は、2 本に分かれます。

桐生市の所得4,247億円を支える市外からの2本の流入。市外通勤の給与約360億円と、年金・交付金などのその他所得約660億円

市外への通勤による雇用者所得(約360億円)

1 本目は、雇用者所得の流入 約 360 億円。国勢調査(2020 年)では、桐生から市外へ通う人が 19,595 人、市外から桐生へ通う人が 15,995 人。約 3,600 人の通勤流出超過が、給与の流入になっています。

年金などのその他所得(約660億円)

2 本目は、その他所得の流入 約 660 億円。年金や社会保障給付、交付税・補助金に、財産所得や企業所得も含む区分です。桐生市の高齢化率は 37.7%(2024 年、全国は 29.1%)なので、年金がこの流入の大きな部分と考えられます。

ただし、1 人当たりで見ると、桐生のその他所得は 190 万円で全国 1,309 位です。流入が多いのは所得が潤沢だからではなく、市内で稼ぐ力が細い分だけ、外から入る所得の割合が大きくなっているからです。

まとめ:桐生市の地域経済循環率75.9%の中身

桐生市の所得 4,247 億円は、約 4 分の 3 が市内の生産から、残る約 4 分の 1 が市外への通勤の給与と年金などから来ています。循環率は生産÷所得なので、この 75.9% を動かすのは生産の側です。そして、その生産の中心になる第 2 次産業は、規模でも 1 人当たりの付加価値でも県内の上位の市と開きがあり、循環率は 12 年間、72〜76% の間で推移してきました。

分解してみて私が一番意外だったのは、投資です。循環率がほぼ横ばいだった 12 年間、民間投資は 6 時点すべてで市外へ出る側でした。「織物の町」の生産を次に担うものがどこから来るのか、数字を並べてみて改めて気になっています。

今回は桐生でしたが、同じやり方で群馬やその周辺の市も分析していく予定です!

当社が新桐生駅のそばにコワーキングスペース Kit-Base をつくったのも、こうした桐生の数字を見たうえでのことです。その理由を以下の記事に書いたので、ぜひご覧ください!

本編 なぜ桐生駅ではなく、新桐生駅近くにコワーキングスペースをつくったのか taplicobase.jp

参考データ