前回、以下の記事で地域経済循環率という指標の定義や見方について解説しました。

定義編 地域経済循環率とは?計算式と見方——低いのは悪いことなのか taplicobase.jp

地域経済循環率は、まちづくりについて考えるときの、とても重要な指標の一つです。

そこで本記事では、当社のある群馬県の 12 市の地域経済循環率を比較して、その特徴を整理していこうと思います!市ごとの面白い特色が分かったので、群馬にゆかりのある方はぜひ最後までご覧ください。

なお、使ったのは、RESAS(地域経済分析システム)の地域経済循環マップです。比較年は、最新の 2022 年 に統一しました。

群馬12市の地域経済循環率ランキング(2022年)

まず、12 市の地域経済循環率を高い順に並べたのが次の図です。

群馬県12市の地域経済循環率。太田市121.8%からみどり市65.8%までを、RESASの2022年データで比較

この図から、100% を超えるのは太田・安中・富岡・高崎の 4 市だけで、残りの 8 市は下回っていることが分かります。順位は、県内 12 市だけを対象に高い順で付けています。

詳細は、次の節で解説します。

循環率100%超の太田・安中・富岡・高崎には、生産拠点が並ぶ

地域経済循環率が 100% を超えるのは、住民や企業に分配される所得より、域内で生み出す付加価値のほうが大きい状態です。工場などの生産拠点が域外へ製品を売り、まとまった付加価値を生み出す市は、分子となる「生産」が大きくなります。

100% を上回った太田、安中、富岡、高崎の 4 市について、RESAS の生産分析で付加価値の産業別内訳を見ると、太田、安中、富岡の 3 市は第 2 次産業の比重が大きい市です。

循環率100%を超えた太田121.8%・安中113.7%・富岡103.7%・高崎102.4%の4市と、100%をわずかに下回る伊勢崎・前橋

4市の付加価値額と第2次産業の割合(RESAS 生産分析)

4 市の付加価値額と第 2 次産業の内訳は次の通りです(RESAS 生産分析・2022 年。順位は全国 1,741 市区町村中)。

市付加価値額(合計)うち第2次産業第2次の割合1人当たり付加価値(第2次)
太田市1兆3,525億円7,581億円56.1%1,430万円(270位)
安中市2,925億円1,858億円63.5%2,101万円(90位)
富岡市2,271億円1,169億円51.5%1,136万円(490位)
高崎市1兆6,648億円4,510億円27.1%929万円(807位)
桐生市(参考)3,223億円941億円29.2%631万円(1,398位)

太田は付加価値の 56% を第 2 次産業が占め、その 6 割が輸送用機械です。安中は 64% で中心は化学、富岡は 52% で輸送用機械。群馬県全体では第 2 次の割合が 38%、全国では 26% なので、この 3 市の製造業の比重は際立っています。従業者 1 人当たりの付加価値も、安中 2,101 万円、太田 1,430 万円と全国上位で、桐生の 631 万円とは 2〜3 倍の差があります。

一方、高崎の第 2 次の割合は 27% で、全国並みです。製造業だけで説明できる市ではなく、商業、業務、交通などを含む広域拠点としての規模があり、付加価値の合計は 12 市で最大の 1 兆 6,648 億円。それが循環率 102.4% を支えています。同じ 100% 超でも、数字をつくる産業構造は市によって異なります。

循環率だけでは「お金が町に残るか」は分からない

ただし、前回の記事でも解説したとおり、地域経済循環率だけでは、住民や企業の所得を市内の生産でどれだけ賄えているかは分かっても、そのお金が実際にその地域に残るか? は分かりません。

所得の主な使い道である住民の買い物と企業の設備投資が、市内に向かえば店や会社の売上として町に残り、市外に向かえば町から出ていくからです。循環率が同じでも、稼いだお金が町に残るかどうかは、ここで分かれます。

稼いだお金が町に残るかは使い道で分かれる。買い物や設備投資が市内に向かえば店や会社の売上として町に残り、市外に向かえば町から出ていく。表の流出入は市外から入る分と出る分の差し引き(※イメージ)

「民間消費の流出入」と「民間投資の流出入」とは

そこで、以下の表では、これを表す「民間消費の流出入」と「民間投資の流出入」の割合を、循環率と一緒にまとめました。どちらも、その市の住民や企業が支出した金額に対する割合です。

「民間消費の流出入」は、住民の買い物について、市外から入ってきた分と市外へ出ていった分の差し引きを意味し、プラスは市外から来る買い物のほうが多いこと、マイナスは市外へ出ていく買い物のほうが多いことを指します。

「民間投資の流出入」は、企業の設備投資などについて、市内に向かった分と市外に向かった分の差し引きを意味し、プラスは市外から市内への投資のほうが多いこと、マイナスは市内から市外へ向かう投資のほうが多いことを指します。

順位市地域経済循環率民間消費の流出入民間投資の流出入
1太田市121.8%−15.3%+19.7%
2安中市113.7%−27.1%+24.2%
3富岡市103.7%−5.0%+10.7%
4高崎市102.4%−2.8%+16.1%
5伊勢崎市99.4%−11.2%+13.4%
6前橋市94.0%+11.1%+0.3%
7館林市89.2%−10.6%+6.0%
8藤岡市83.5%−9.1%−2.1%
9渋川市83.2%+9.6%−9.1%
10沼田市82.3%+18.7%−13.6%
11桐生市75.9%−6.9%−7.5%
12みどり市65.8%−6.3%−13.6%

買い物の向きは順位とばらばら、投資の向きは順位と揃う

民間消費を見ると、循環率 1 位の太田は −15.3%、2 位の安中は −27.1% で、生産が所得を上回る市でありながら、差し引きで住民の買い物は市外へ出ています。反対に、循環率が 100% を下回る前橋(+11.1%)と沼田(+18.7%)は、市外からの買い物のほうが多くなっています。桐生の −6.9% は 12 市の中では中ほどで、買い物の流出が特に大きい市ではありません。

一方、民間投資は、循環率で上位の 7 市がすべて流入超過、下位の 5 市がすべて流出超過です。買い物の向きは順位とばらばらなのに、投資の向きは順位と揃っています。

群馬12市は4つの型に分かれる

循環率に、買い物と投資の向きを重ねて見ると、12 市は 4 つに分けられます。

12市に表れた4つの役割。生産拠点の市、広域の業務拠点、買い物を集める市、市外の給与と年金が所得を支える市

太田・安中・富岡は、工場が域外へ売る生産拠点の市です。高崎は商業・業務・交通がそろった広域の拠点で、前橋・沼田・渋川は、市外からの買い物のほうが多い市です。桐生とみどりは、市外の給与と年金が所得を支えている市です。

前橋と沼田:買い物の集め方の違い

前橋は県都で商業施設が集まっていて、市民の買い物 7,154 億円に対して 795 億円が市外から入っています。

沼田は市民の買い物が 878 億円しかなく、そこに 164 億円が入るので、率では +18.7% と 12 市で一番高くなります。沼田市は片品村・川場村・昭和村・みなかみ町と定住自立圏を組む中心市で、市も自分たちを「利根沼田広域市町村圏の中で、行政、商業、情報その他の生活サービス機能の集積する中核都市」と説明しています。

周りの町村の買い物先で、しかも昼間の滞在人口が国勢調査の人口を上回る観光地なので、小さな市に周辺と観光客の消費が集まっているようです。

まとめ:群馬12市の地域経済循環率から見えたこと

群馬の 12 市を同じ 2022 年のデータで並べると、循環率は太田の 121.8% からみどりの 65.8% まで開き、100% を超えるのは太田・安中・富岡・高崎の 4 市だけでした。上位 3 市は付加価値の半分以上を第 2 次産業が生む製造業の町で、高崎は製造業の比重が全国並みでも、県内で最大の付加価値の合計が循環率を押し上げています。

循環率が高くても、稼いだお金が町に残るかは別の話です。買い物の流出入は順位とばらばらで、太田や安中は循環率が高くても買い物は市外へ出ていき、前橋や沼田は 100% を下回りながら市外からの買い物のほうが多くなっています。

数字を役割で読むと、12 市は生産拠点の市、広域の拠点、買い物を集める市、市外の給与と年金が所得を支える市の 4 つに分かれます。

並べてみて一番面白かったのは沼田です。市民の買い物が 878 億円の町に、外から 164 億円が入ってくる。数字を見るまで、沼田がこれほど周りの消費を集めているとは思っていませんでした。地域経済循環率の高い太田市が、買い物では市外へ出ていくのも意外でした。循環率の順位だけ眺めていたら、どちらも気づかなかった話です。


参考資料